ISBN:4309017053 単行本 長嶋 有 河出書房新社 2005/03/15 ¥1,470

なんだ、そうか。もうとっくに、失っていたんだな。そんな気持ちを描くのがこの人は天才的に上手い。晴れがましいとか清々しいとかだけじゃない、寂しいだけでも悲しいだけでもない、開放感と喪失感をいっぺんに感じさせてくる、非常に珍しい人である。

表題作「泣かない女はいない」の主人公睦美も、「センスなし」の主人公保子も、自らを「鈍い」と評している。他人を把握するのにも時間がかかるが、それ以上に自分の気持ちに対して鈍い。怒りも悲しみも恋心も、一拍遅れてやってくる(ここで彼女らに共感できる私も多分かなり相当鈍い)。彼女たちはある日突然、はっと気付く(それはそれは唐突に)。そうか、そうだったのか。「もうとっくに、失っていたのか」と。それは思いもよらぬ救いと同時に、それまで麻痺していた痛みも引き起こす。どちらも確かに感じながら、次の瞬間、急速にどちらかの方向へ向けて傾いていく。今までもずっと、少しずつ傾いていたことに気付かされながら。
こんな作品を描き続けられる長嶋さんて、ホントに鋭い人だと思うのだ。

追記

この本は必ず表紙をめくってみてくださいね。

コメント

キリカ
キリカ
2005年12月30日15:51

図書館で読んだので表紙めくれなかったよ・・・・(´・ω・‘)ショボーン

nophoto
sugar
2005年12月30日16:17

まだ手元にあったのでめくってみました..
ネタばれ(?)になりそうなので報告だけです.

ロクハナ
ロクハナ
2006年1月1日18:47

書店でこっそりめくれば良いさ。破かないように気をつけてなー。
東野圭吾の「秘密」とか、めくらないと分からん本て結構ある。
たまには買えってことなんだろうな(涙)>キリカ

すまん、貸すとき言うの忘れてた。
ウチの図書館の良いとこは、表紙をコーティングしないとこだね。
おかげですぐボロボロになるけど>sugar

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