いつも遠くから、ただ見ていることしかできなかった。星明子のように。目が悪いので、物陰に隠れつつも凝視していた。たぶん相当恐かったと思う。
そんな、私が遠くから見つめ続けた憧れのお洋服ブランド「Lois CRAYON」のワンピースを遂に買ってしまいました。

うわあああああ、ゴスロリのワンピースと同じくらい値段高かったああああ!!キャンディフルーツのメイド服と同じくらい値段高かったああああ!!どっちも買ったことないがああああ!!

あわわわわわわ。

すごい。すごいぞこれ。着てるだけで物凄いええとこのお嬢様に見える。馬とか乗ってそうバイオリン弾けそう学校まで運転手が送り迎えしてくれそう(※ロクハナのお嬢様イメージ)。
普段はひたすら「鈍そう」にしか見えない私の顔が、高価なお洋服のせいですっかり「清純で品のあるお顔立ち」になっている。ひいいいい。とても昨日まで「脱いで抱いて犯して」とか書いてた人とは思えない。最近こんな高い服まったく着てなかったから、着てるだけで緊張してしまう。スカートがシワになるのが恐くて、歩き方も座り方もつい「キチーン」としてしまう。なんだこれは。お嬢様養成ギプスか?!
どうってことない普通のモノトーンのワンピースなんだけど、素材とデザインでここまで人を変えてしまうものか。少なくともこのお洋服を着ている間だけは、私も素敵なお嬢様でいられそう…ウフフ。隣りに座ってる人が間違って飲み物こぼして、シミでもつけようものなら鼻血が出るまでブン殴りますけどね。「おんどれ何さらしとんじゃボケエーッ!!」ごきげんよう。
誰に言ってもまったく理解されないが、私が手本としているファッションセンスの持ち主は、長年

岸本加世子である。

どんなに派手で奇抜な服でも、それはそれは地味に着こなせてしまうという凄まじい「なじみ感」。憧れる。私の追及する「ダサ可愛さ」の究極の姿だ。褒めれば褒めるほどけなしているように聞こえるが、もちろん本気で褒めている。
私は時々正気を失って常軌を逸した服を買ってくるのだけど、そんなとき自分が岸本加世子だったら良かったのにと本気で思う。地味さでは絶対私の方が勝つと思うのだが、だからと言って派手な服が地味に落ち着くかというとまったくそんなことはない。どーしても服が悪目立ちする。浮いてしまう。馴染まない。落ち着かない。統一感がない。なんかこう、全体的に「濁す」ような感じにしたいのに。一体なにがいかんのだ。私自身に落ち着きが足りないのか。ああ、岸本加世子になりたい。

とりあえず「リードって便利だな♪」とかCMの真似して口ずさんでみてはいる。
マンガ喫茶でうっかり『Ray』(ファッション誌)など読みふけってしまったばっかりに、「そうか、世の中の女子ってこんなにフェミニンな格好してるのか」と頭の中が間違った認識でいっぱいに。そのまま(間違ったまま)勢い余ってFerouxでミニスカート購入。ライトグレーとピンクのチェック。ガーリーにプリーツ。おまけにスソからレースが覗くというフェミニンっぷり。参ったか。ピンクのトップスに白のカーディガンを合わせ、合コンでも行くのかお前はという格好で職場へ。

「て、なんで女子の私と組むときにそういう格好で来ますか」

「いやその…男子相手だと微妙に恥ずかしいというか」

『Ray』は「どうしたら男性にウケるのか」を徹底追及した雑誌だということを、あんまり理解していなかった私。うん、ちょっと、根本的に間違ってた。ごめん。

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