優しい音楽

2006年1月13日 読書
ISBN:4575235202 単行本 瀬尾 まいこ 双葉社 2005/04 ¥1,260

うん、読んでしまいますね。わりと厄介な状況に巻きこまれる主人公たちが、結果的に何かあたたかいものを手に入れますが、そこまでの流れが不自然じゃなくて素敵だなあと。人の複雑さを分かりつつも、人を信じることのできる人じゃないと書けない文章じゃないでしょうか。
最初の短篇、表題作の「優しい音楽」で、千波が掲げる「男を虜にする五つのポイント」というのがなかなか笑えます。別の本になりますが「図書館の神様」でも、人の心に訴える詩のポイントを超適当に大雑把に要約して語るシーンがあって、私あれもかなり好きでした。瀬尾さんてこういうマニュアルをいろいろ知ってて、それがいかに役に立たないかもよくご存知なのだろうな、と勝手に想像しております。
確かに、人と繋がろうとすると「1、彼女には自分の味方になってほしい」「2、弱いところを慰めてほしい」「3、ギャップに弱い」なんて箇条書きをそのまま実行に移しても、多分あんまり効果はない(笑)。分からないなあとか噛み合わないなあとか思いつつも、何かの拍子に新鮮な衝撃を味わい合って、感心したり呆れたりしながら親密さってわいていくんじゃないか。スピーディでもスマートでもないけど、こういう風に積み重なって出来た親密さって、信頼できる気がする。
瀬尾さんの小説を読んでると、人と関わるのって実は面白いのかもしれんな、と、人付き合いが苦手な私でも思ってしまうのでした。

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