ISBN:4151300937 文庫 アガサ・クリスティー 早川書房 2004/08/18 ¥798
ホームズが好きな人はルパンが読みづらく、ルパンが好きな人はホームズが読みづらいそうですが、「アガサ・クリスティーが読みづらい」っていう人いますか?私は多分、ホームズよりルパンより読みやすいです。と言っても、比較できるほど読んでないというのが実状なんですけどね(ごめんなさい、ミステリーはSFに次いで弱いのです)。
クリスティーと言えば「ABC殺人事件」や「オリエント急行の殺人」「そして誰もいなくなった」などが有名ですが、私は何故かそういった有名作品に縁がなく、別に狙ってるわけでもないのにポアロもミス・マープルも出ない作品にばかり当たっていました。当時は「うわ、またマイナーな方選んでしまった」と軽く気落ちしてたのですが、今思うとなかなか良い作品に多く出会えていたので、結構ラッキーだったのかなとも思っています。
「蒼ざめた馬」はクリスティー作品の中でもおそらくオカルト要素の強い作品。「呪いで人を殺せるか」といった、ちょっと「トリック」っぽいお話。実はゴシックな雰囲気を書かせるとべらぼうに上手いクリスティー。「まさかね、そんなことあるはずないよね」と思いつつ、「でもひょっとして」という隙を突いてくる手腕がさすがです。例によってポアロもミス・マープルも出ませんが、出てくる人物がみんなびっくりするくらい個性的で面白い。特に、鋭いんだか鈍いんだか、ただ話を交ぜっ返しに出てきてるだけじゃないのかというオリヴァ夫人のキャラクターがとても素敵。クリスティー自身も楽しんで書いてるのかもしれないけど、読んでる方も彼女が出てくるとホッと人心地つくような安心感を覚える。こういうオカルト趣向の強い作品には、彼女のような存在が非常に有り難い。個人的に、脇役の女の子たちも実は結構好きでした(笑)。そんなとこでも、クリスティーって別にミステリーじゃなくても十分面白いよな、と再確認させられます。
願いを叶えて欲しいと魔術師にすがる人たちはみなもっともらしい大義名分を持ち出すけど、取り繕っているものを剥がせば中身は全部同じ。「媚薬か毒薬」。人が欲しがる「魔法」なんて、突き詰めればこのどちらかしかない。そこで実際に行われる魔術だって同じこと。儀式だとか呪文だとか雰囲気だとか、そんな飾りをみな取り払ってしまえば、残るのは催淫剤か毒だけなのよ。こんな核心を突くようなことを登場人物に言わせるあたりも上手いですね。こういうことって、分かってる気になってるけど実は簡単に忘れがちだから。それで毎回まんまと「うわべの飾り」に騙されてる私は本当にアホだと思います。
実はキリカのレビューを読んでて私も「春にして君を離れ」で書こうと思ったのだけど、あれは私にとっても未だに恐ろしい作品で、とてもとても書けませんでした(汗)。ああああああれはホント恐いよね?「自己満足」なんて、最も陥りやすい罠じゃないか?読んでて「うああああ、もう勘弁してください」と何度謝ったことか(誰に)。あの本の恐ろしいところは、めちゃめちゃ恐いくせに読むのをやめられないところだ…。ここだけ私信ぽくてごめん。
ハヤカワから出たクリスティー文庫は、字が大きくて読みやすいですよ。訳も新しいので、クリスティーを読み返したい人にも、初めて読む人にもお勧めです。私も次こそはポアロかマープルを読もう。
ホームズが好きな人はルパンが読みづらく、ルパンが好きな人はホームズが読みづらいそうですが、「アガサ・クリスティーが読みづらい」っていう人いますか?私は多分、ホームズよりルパンより読みやすいです。と言っても、比較できるほど読んでないというのが実状なんですけどね(ごめんなさい、ミステリーはSFに次いで弱いのです)。
クリスティーと言えば「ABC殺人事件」や「オリエント急行の殺人」「そして誰もいなくなった」などが有名ですが、私は何故かそういった有名作品に縁がなく、別に狙ってるわけでもないのにポアロもミス・マープルも出ない作品にばかり当たっていました。当時は「うわ、またマイナーな方選んでしまった」と軽く気落ちしてたのですが、今思うとなかなか良い作品に多く出会えていたので、結構ラッキーだったのかなとも思っています。
「蒼ざめた馬」はクリスティー作品の中でもおそらくオカルト要素の強い作品。「呪いで人を殺せるか」といった、ちょっと「トリック」っぽいお話。実はゴシックな雰囲気を書かせるとべらぼうに上手いクリスティー。「まさかね、そんなことあるはずないよね」と思いつつ、「でもひょっとして」という隙を突いてくる手腕がさすがです。例によってポアロもミス・マープルも出ませんが、出てくる人物がみんなびっくりするくらい個性的で面白い。特に、鋭いんだか鈍いんだか、ただ話を交ぜっ返しに出てきてるだけじゃないのかというオリヴァ夫人のキャラクターがとても素敵。クリスティー自身も楽しんで書いてるのかもしれないけど、読んでる方も彼女が出てくるとホッと人心地つくような安心感を覚える。こういうオカルト趣向の強い作品には、彼女のような存在が非常に有り難い。個人的に、脇役の女の子たちも実は結構好きでした(笑)。そんなとこでも、クリスティーって別にミステリーじゃなくても十分面白いよな、と再確認させられます。
願いを叶えて欲しいと魔術師にすがる人たちはみなもっともらしい大義名分を持ち出すけど、取り繕っているものを剥がせば中身は全部同じ。「媚薬か毒薬」。人が欲しがる「魔法」なんて、突き詰めればこのどちらかしかない。そこで実際に行われる魔術だって同じこと。儀式だとか呪文だとか雰囲気だとか、そんな飾りをみな取り払ってしまえば、残るのは催淫剤か毒だけなのよ。こんな核心を突くようなことを登場人物に言わせるあたりも上手いですね。こういうことって、分かってる気になってるけど実は簡単に忘れがちだから。それで毎回まんまと「うわべの飾り」に騙されてる私は本当にアホだと思います。
実はキリカのレビューを読んでて私も「春にして君を離れ」で書こうと思ったのだけど、あれは私にとっても未だに恐ろしい作品で、とてもとても書けませんでした(汗)。ああああああれはホント恐いよね?「自己満足」なんて、最も陥りやすい罠じゃないか?読んでて「うああああ、もう勘弁してください」と何度謝ったことか(誰に)。あの本の恐ろしいところは、めちゃめちゃ恐いくせに読むのをやめられないところだ…。ここだけ私信ぽくてごめん。
ハヤカワから出たクリスティー文庫は、字が大きくて読みやすいですよ。訳も新しいので、クリスティーを読み返したい人にも、初めて読む人にもお勧めです。私も次こそはポアロかマープルを読もう。
コメント
クリスティは1冊だけ。
20過ぎてから“そして誰もいなくなった”を
読んで怖くて多分もう駄目です。
中学生の時、“そして誰もいなくなった”の芝居をやって
最後まで生き残る人の役だったのですけど、
その時もすごく怖かった。
目立てると思って喜んでいたのだけど、
役でも生き残るのは怖かったです。
舞台に人が減っていくのが怖くて、
おいてかないでって感じでした。
おそるべしクリスティ。
悪趣味なくせに洗練されてる感じが気持ち悪くて
私も相当恐かった思い出があります。
一人だけ残されたらたぶん発狂するでしょう。