ISBN:4488612059 文庫 レイ・ブラッドベリ 東京創元社 2006/02/27 ¥924

ブラッドベリばっかりですいません。最初の「ウは宇宙船の略号さ」(R is for Rocket)だけでもう、胸いっぱいになっちゃって大変でした。既にハヤカワ文庫で読んだ話も多く含まれてましたが、「ウは宇宙船の略号さ」一篇だけのためにこの本の全額出しても私は全然惜しくないですよ。いやこれはホント、たまらないですよね。胸が苦しいのに物凄く面白くて、何度も何度も読んでしまいます。
二度と戻らない「最後の土曜日」を「いつものとおりに」過ごすクリスとレイフ。お互いに事情を了解していながら「来週の土曜日に」また会おうと言い合うふたり。「ぼくらは男の子で、男の子だということが気に入っていて、町に住んでいてその町が気に入っており、学校もかなり好きだし、フットボールが好き、お父さんやお母さんが好きで……」そしてそれよりももっと好きな、宇宙船。クリスが「選ばれた」ことによって、あらゆる物語が繊細な現れ方をしては消えてゆく。それがあんまり魅力的に語られるので、いつまでも余韻が消えないのだ。

他にも「霧笛」「宇宙船乗組員」「この地には虎数匹おれり」「いちご色の窓」「霜と炎」など、印象に残る名作が盛りだくさんで、なかなかお買い得かもしれない。私が実は気に入っている「竜」(The Dragon)が収録されてるのもポイント高い。いやこれ、あの、いいですよね?ダメですか?(笑)ブラッドベリにしてはオチが明快で、読んでで非常に気持ちいいんですが(よく読むとそれほど明快でもないんだけど)。O・ヘンリとか好きな人にはぐっと来るんじゃないか、などと勝手に思っています。

コメント

nophoto
halfnote
2006年5月1日11:16

僕には霧笛が印象深かったけど、余韻 をかんじさせる短編集ですね。本棚の背表紙をみてるだけでも思いをめぐらせることのできる本というのはすくないけれど、そういう幸せな本であることは間違いない。ブラッドべりは年を重ねると、次第に心の奥の霧と闇に向かうので、個人的には若い頃の新鮮さのほうが好きではあるかも。

ロクハナ
ロクハナ
2006年5月1日21:10

字が大きくなった順に文庫買いなおしてます(笑)。
私も「霧笛」好きなんですが、別の文庫を紹介する際にちょっと書いたので割愛しちゃいました。この短篇集は名作揃いなので、どの話を取り上げて紹介していいものか悩みますね。そこであえて「竜」を出してくる人は多分私くらいだと思いますけどね。

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