ISBN:4488013996 単行本(ソフトカバー) デイヴィッド・アーモンド 東京創元社 2000/09 ¥1,523

児童文学(ヤングアダルト本)は馴染みがないとどう選んでいいのか難しいですね。装丁や邦題に少しでも「あざとさ」を感じると、読みもしないでバカにしてしまうことばかりで。ホント申し訳ないことをしたなと感じる本が過去に何冊もあります。不案内の分野ではいつももっと謙虚でいたい。

デイヴィッド・アーモンドは今でこそ地位を確立した感がありますが、これが邦訳で出た当時は、私はまだ胡散臭い目で見てました。第一印象が悪すぎるんです。邦題も表紙も、作品を読んでから見ると結構納得行くんですが、読む前に見るとウケを狙い過ぎてるようでどうしても好きになれない(好きな人は大好きみたいだが、私はまったくダメでした)。帯を書いてるのが宮崎駿っていうのもまた、却って引かせる原因になったのではと未だに疑っています(苦)。
結果から言うと、この作品は物凄く良かった。ホント表紙や邦題なんかで引いてないで、とっとと読んでれば良かったと激しく後悔しました。宮崎さんもサービスで帯書いてたわけじゃないんですね(しつこい)。

未熟児の妹が今にも死ぬのではないかという不安と共に生きているマイケル。そしてやはり、同じ気持ちを抱えている父と母。彼らはそういった不安を押し殺し、慰め合い、時に耐えられなくなりながら、荒れた庭と今にも崩れそうなガレージと、大掛かりな改装を必要とする新しい家で暮らし始める。

ほんの少し今までと違う時間を過ごしただけで、昨日までの生活にブレが生じるような違和感。見えなかったものがくっきりと現れてくる驚き。妹の死がすぐ間近にあるかもしれないという恐怖。あらゆる出来事に対峙したときのマイケルの描写がどこまでも的確で、決して多くを語っていないにも関わらず思いが激しく胸に迫ってくる。かたちにも言葉にもならない気持ちが、語られないが故に溢れてくるように。この描かれ方はホント素晴らしいと思います。
物語自体も面白くて、隣家の少女ミナの指し示すものたちに次々興味を覚え、魅了されていく。デイヴィッド・アーモンドを初めて読むなら、是非お勧めしたい作品です。

コメント

nophoto
halfnote
2006年5月1日11:24

実は本のタイトルで買ってしまった1冊(笑 表紙にはびびったけど、デイヴィッド・アーモンルを信じてよんでみたら、かなりいける本でした。この本でデイヴィッド・アーモンドを知るようになったのは幸福なことかもしれないね。最近はファンタジーブームが再来しているようですが、この本は時代を越えてのこりそう。
読むにつれて、頭の中に拡がる本のイメージの世界が次第にみずみずしく広がるような感じがあります。

ロクハナ
ロクハナ
2006年5月1日21:25

いやー素直にすぐ読んで良かったですね。私まだ2冊しか読んでませんが、彼の作品の中ではこれかなり良いんじゃないでしょうか。個人的に、ユベール・マンガレリ読んだときと同じくらい衝撃でした。
デイヴィッド・アーモンドは新作がよく売れてるようですが、「肩胛骨は翼のなごり」もずっと店頭に置いておいて欲しいですね。

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