ISBN:4309203841 単行本 David Almond 河出書房新社 2003/06/20 ¥1,575
正直読んだ直後は「それほどでも…」と思ったのだけど、しばらくしてからじわじわと、この本で描かれてた光景が頭に浮かんできては心をとらえるようになってしまった。暗闇の中で泥の中から何かを掘り出し続けている老人、水かきのある手を持ち、不思議な喋り方をするヘヴンアイズ、非常口のドア(だったかな)で筏を作り、孤児院を抜け出す子供たち。なんだかどの光景も静謐で夢のように美しくて、思い描いているだけで冷たい朝の空気の中にいるような清浄な気持ちになってゆく。
孤児院を筏で脱出、と言っても胸踊る冒険物語なんかでは全然なくて、3人は川を下るもさっそく濁流にのまれて泥とゴミの溜まった「ブラック・ミドゥン」に乗り上げてしまう。そこにいたのは独自の「イカレた」生活を営んでいる少女ヘヴンアイズと彼女を保護している奇妙な老人。どう見ても頭がおかしいとしか思えない2人なのに、その2人とそこでの生活は、妙に私を惹きつける。孤児院で暮らしていた少女エリンの張り詰めたような語りも、静寂な空気とあいまって緊張感を呼び、ときどき痛々しさを伴いながら強く心に響くのだ。
冒険物語やファンタジーを期待した読者にはガッカリな展開かもしれないが、この物語には確かに、独自の繊細な輝きがあると思います。行き詰ったり、もどかしかったり、自分の力ではどうにもならない状況だからこそ生きてくる、脆いけれど大切にしたくなるような何かが(なんか物凄く漠然とした言い方してます、ごめんなさい)。それが最後まで壊れずに残っているのが見事。エリンを始めとする子供たちの抱えている、少し痛くてヒリヒリする感じそのものが、既に獲難い宝物なのかもしれない。
正直読んだ直後は「それほどでも…」と思ったのだけど、しばらくしてからじわじわと、この本で描かれてた光景が頭に浮かんできては心をとらえるようになってしまった。暗闇の中で泥の中から何かを掘り出し続けている老人、水かきのある手を持ち、不思議な喋り方をするヘヴンアイズ、非常口のドア(だったかな)で筏を作り、孤児院を抜け出す子供たち。なんだかどの光景も静謐で夢のように美しくて、思い描いているだけで冷たい朝の空気の中にいるような清浄な気持ちになってゆく。
孤児院を筏で脱出、と言っても胸踊る冒険物語なんかでは全然なくて、3人は川を下るもさっそく濁流にのまれて泥とゴミの溜まった「ブラック・ミドゥン」に乗り上げてしまう。そこにいたのは独自の「イカレた」生活を営んでいる少女ヘヴンアイズと彼女を保護している奇妙な老人。どう見ても頭がおかしいとしか思えない2人なのに、その2人とそこでの生活は、妙に私を惹きつける。孤児院で暮らしていた少女エリンの張り詰めたような語りも、静寂な空気とあいまって緊張感を呼び、ときどき痛々しさを伴いながら強く心に響くのだ。
冒険物語やファンタジーを期待した読者にはガッカリな展開かもしれないが、この物語には確かに、独自の繊細な輝きがあると思います。行き詰ったり、もどかしかったり、自分の力ではどうにもならない状況だからこそ生きてくる、脆いけれど大切にしたくなるような何かが(なんか物凄く漠然とした言い方してます、ごめんなさい)。それが最後まで壊れずに残っているのが見事。エリンを始めとする子供たちの抱えている、少し痛くてヒリヒリする感じそのものが、既に獲難い宝物なのかもしれない。
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