こんな映画が、―吉野朔実のシネマガイド
2006年6月22日 読書
ISBN:4891946318 単行本 吉野 朔実 PARCO出版 2001/07 ¥1,365
読書マンガが有名な吉野さんですが、映画ガイドも描いてます。イラストいっぱいで吉野ファンも必見。
自分の好きなマンガ家(小説家とか俳優でもいいけど)と好きな映画一緒だったりすると嬉しいですよね。私この本でいちばん嬉しかったのがレブ・ブラドック監督の「フェティッシュ」(1996年アメリカ、Curdled)を褒めてくれてたこと。「あまり期待せずに足を運んで、当たりだった時ほど嬉しいことはありません」その通りでございます。「フェティッシュ」はまさにそういう映画です(笑)。宣伝にこれでもかってくらいタランティーノを出してきた映画だったので、タランティーノ監督の映画だと勘違いして見に行った人が大勢いたんじゃないでしょうか。私もその中の一人です。でもむしろ「勘違いして良かったー!」と(笑)。これは未だに人に勧めてしまう映画です。
アキ・カウリスマキ監督の「浮き雲」(1996年フィンランド、Drifting Clouds)の評価が高いのも嬉しかった。この映画の、「作ろうと思ってもなかなか出来ない」良さをすごく良く分かってくれていて、カウリスマキファンの私は思わず顔がほころんでしまいます。こういう映画って、一見誰でも簡単に作れそうな作品に見えるんです確かに。そこで勘違いして監督を侮る人も少なくないのに、さすが吉野さん、そんなこれ見よがしな罠には陥りませんね。妻と夫が少ないセリフのやり取りで一緒に家に帰るシーンで「これがどういうことかというと」と説明(※このシーンをちゃんと説明できるってだけで凄いことなんですよ。普通は「なんだか分からないけどまあ、分からないままでいいや」と無視しちゃうとこだと思います)した後、「これは人の関係として正しいと、そしてせつないと私は心を打たれました」と感想を書いているのが、吉野さんらしくてイイなと思いました。
コーエン兄弟の作品に関して吉野さんの評価が大割れで(「ブラッド・シンプル」が「嫌い」、でも「バートン・フィンク」見たら「凄く面白かった」。で、「未来は今」を劇場まで見に行ったら「ぜんぜんだめ」)、「もうこの人たちって何なの?才能あるの?無いの?」と混乱してる様子も面白い。これコーエン兄弟ファンの方なら「わかる分かる」って言いたくなりませんか。私もやっぱりファンなんですが(いかにも好きそうってよく言われる)、新作見て「アレ?」ってことも少なくないので(笑)。非常に良く分かる混乱っぷりでありました。
読書マンガでもそうですが、吉野さんの凄いところは本当に広い範囲に手を伸ばすことですね。この本もメジャーからマイナーまで、あらゆる国の映画が紹介されてます。「食わず嫌いは止めよう」っていう努力と柔軟さもさることながら、「良い意味で裏切られた」時の嬉しさを忘れない人なんじゃないかと思いました。ああいう嬉しさってちょっと、感動的なんですよね。自分の見識が間違ってたのに嬉しいっていう、珍しい例。偏見にまみれて食わず嫌いしてると、なかなか獲られないものです。「全然期待してなかったけど面白かった!」こういう経験の積み重ねって、人を謙虚にするのに一役かってるんじゃないでしょうか(笑)。
最後に、クローネンバーグ監督の作品について「へんてこな映画ばっかり作ってます」が「どこか鈍くさいところが、あまり研いでいない出刃包丁で刺されたようないやーな痛みを持っていて、しかし本人の性格か『私は真剣に面白いと思ったものを作っているんだよ』という切実な変態さにほだされ、気がついたらほとんどの作品を観ていました」と書いてあるのが笑えたのでここにも書いておきます。
読書マンガが有名な吉野さんですが、映画ガイドも描いてます。イラストいっぱいで吉野ファンも必見。
自分の好きなマンガ家(小説家とか俳優でもいいけど)と好きな映画一緒だったりすると嬉しいですよね。私この本でいちばん嬉しかったのがレブ・ブラドック監督の「フェティッシュ」(1996年アメリカ、Curdled)を褒めてくれてたこと。「あまり期待せずに足を運んで、当たりだった時ほど嬉しいことはありません」その通りでございます。「フェティッシュ」はまさにそういう映画です(笑)。宣伝にこれでもかってくらいタランティーノを出してきた映画だったので、タランティーノ監督の映画だと勘違いして見に行った人が大勢いたんじゃないでしょうか。私もその中の一人です。でもむしろ「勘違いして良かったー!」と(笑)。これは未だに人に勧めてしまう映画です。
アキ・カウリスマキ監督の「浮き雲」(1996年フィンランド、Drifting Clouds)の評価が高いのも嬉しかった。この映画の、「作ろうと思ってもなかなか出来ない」良さをすごく良く分かってくれていて、カウリスマキファンの私は思わず顔がほころんでしまいます。こういう映画って、一見誰でも簡単に作れそうな作品に見えるんです確かに。そこで勘違いして監督を侮る人も少なくないのに、さすが吉野さん、そんなこれ見よがしな罠には陥りませんね。妻と夫が少ないセリフのやり取りで一緒に家に帰るシーンで「これがどういうことかというと」と説明(※このシーンをちゃんと説明できるってだけで凄いことなんですよ。普通は「なんだか分からないけどまあ、分からないままでいいや」と無視しちゃうとこだと思います)した後、「これは人の関係として正しいと、そしてせつないと私は心を打たれました」と感想を書いているのが、吉野さんらしくてイイなと思いました。
コーエン兄弟の作品に関して吉野さんの評価が大割れで(「ブラッド・シンプル」が「嫌い」、でも「バートン・フィンク」見たら「凄く面白かった」。で、「未来は今」を劇場まで見に行ったら「ぜんぜんだめ」)、「もうこの人たちって何なの?才能あるの?無いの?」と混乱してる様子も面白い。これコーエン兄弟ファンの方なら「わかる分かる」って言いたくなりませんか。私もやっぱりファンなんですが(いかにも好きそうってよく言われる)、新作見て「アレ?」ってことも少なくないので(笑)。非常に良く分かる混乱っぷりでありました。
読書マンガでもそうですが、吉野さんの凄いところは本当に広い範囲に手を伸ばすことですね。この本もメジャーからマイナーまで、あらゆる国の映画が紹介されてます。「食わず嫌いは止めよう」っていう努力と柔軟さもさることながら、「良い意味で裏切られた」時の嬉しさを忘れない人なんじゃないかと思いました。ああいう嬉しさってちょっと、感動的なんですよね。自分の見識が間違ってたのに嬉しいっていう、珍しい例。偏見にまみれて食わず嫌いしてると、なかなか獲られないものです。「全然期待してなかったけど面白かった!」こういう経験の積み重ねって、人を謙虚にするのに一役かってるんじゃないでしょうか(笑)。
最後に、クローネンバーグ監督の作品について「へんてこな映画ばっかり作ってます」が「どこか鈍くさいところが、あまり研いでいない出刃包丁で刺されたようないやーな痛みを持っていて、しかし本人の性格か『私は真剣に面白いと思ったものを作っているんだよ』という切実な変態さにほだされ、気がついたらほとんどの作品を観ていました」と書いてあるのが笑えたのでここにも書いておきます。
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