いつか、どこかで

2006年10月17日 読書
ISBN:4105900420 単行本 高見 浩 新潮社 ¥1,995

海外小説ってどこの出版社で発売されるかによって全然印象違いますよね。以前書いた(というか書きかけで止まったままです、ごめん)リチャード・メイソンの「溺れゆく者たち」なんか、新潮クレストブックスで出てたらもっと好評価だったんじゃないかと思うし、逆にこのアニータ・シュリーヴの「いつか、どこかで」は角川eブックスで出ててもおかしくないような気がする…。
別にどっちが良いってわけじゃないんだけど、なんとなく、新潮だと「文学作品だな」、角川だと「エンターテイメント作品だな」って、読む前から心構えが決まってしまうようなとこあります。たくさん読んでる人ほどそうじゃないでしょうか。こういうの、本を選ぶときの目安としてはとっても便利な機能なんだけど、それでいて結構、妨害にもなりますよねー(汗)。たまに苦手な出版社の本を読むと、予想外に凄く面白かったりして衝撃です(笑)。

アニータ・シュリーヴは「パイロットの妻」(新潮クレスト)も一応読んでおりました。この「いつか、どこかで」もそうなんですが、実は両方ともブックオフで買いました。どちらも「出だしが官能的なので買ったけど、その後の盛り上がりに行くまで詰まらないからもういいや…」という感じのところにしおりが挟まってました(笑)。私もアニータ・シュリーヴの描写好きなんですけどねー。ヒロインが詩を出版した記念パーティで、夫が彼女の本の上にワイングラスを載せ、そのせいで表紙に赤い輪ができてしまうのだけど、夫は気にもとめないで出て行く…とか、日常的な描写で、2人の仲がもう、どうしようもないくらい離れてしまっていることが伝わってきてズシンと来たりするし。人だけじゃなく、風景の冷たさを描く腕も秀逸だなと思います。

でも正直そんなにお気に入り作家ではないんですよ(汗)。ありきたりになりそうな不倫話をよくぞここまで、とは思うんですが、好きかと言われるとちょっと…。
「パイロットの妻」では不倫される側の話だったのに対し、「いつか、どこかで」は不倫する側のカップルを描いてるので、官能性がより強調されてるように見えるんですが、アニータ・シュリーヴの持ち味って官能性もさることながら、ずっとつきまとって離れない「不吉さ」だと思うんです。良くないことが起こる、という前兆を、無意識にずっと感じさせられているような…。それが独特の緊張感を生んで良いのかもしれませんが、私は後味の悪さの方を強く感じてしまって結構辛い。

「パイロットの妻」「いつか、どこかで」どちらも辛い話ですが、内容の面白さで選ぶなら「パイロットの妻」の方を私は推します。

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