暴走どころか、大爆発です。栗田有起。
短編集と知らずに買って、最初の一編「サラブレッド」が終わる時には「ええええ?!終わりなの?これからなのに??!」と非常にがっかりしたんですが(それだけ面白かったんですよ)、他の短編も読んでいったらぐんぐん引き込まれて「あわわわ、どうしよう、面白い」とすっかり虜になってしまった。「鮫島夫人」の寂しいあたたかさ、「猫語教室」のいびつさと異様な昂ぶり、女たちの繋がり方が何故か淫靡で妙に気に入ってしまった「蛇口」、もう、うわー、うわー、と言うしかない「アリクイ」、凄いところへ来てしまったなとしばし呆然とする「さるのこしかけ」、醜い女の失意と悲しみに満ちた一生を羨む、ひどく美しい女のおぞましい世界を描いた「いのしし年」、意味も繋がりもまったく分からないけど、最後、唐突に出現する美しさに胸が打ち震える「ユニコーン」、など(などって、ほとんど全部書いてしまったが)、魅力が溢れてもうどうしてよいか分からないような短編ばかり。

最初の1、2編で「ちょっと、失敗かなー」と思っても(思った、ごめん)、そこで見限らずに是非続けて読んでいただきたい。
現実の軽さと夢の重みに引きずられ、気がつくと「どこだここは(汗)」と混乱する、そんな面白いところへきっと行けるはず。心細い、不安定な、頼りない足場。目覚める直前の夢のような焦燥感、夢から目覚めた直後の、安堵と物足りなさの入り混じった気持ち。全編読み通すと、ちょうど良い感じにそんな(変な)心持ちに。今すぐにでも、何かありえないものが見えそう。見えたものの意味は、まったく分からないだろうけども。

コメント

お気に入り日記の更新

この日記について

日記内を検索