ISBN:4309017053 単行本 長嶋 有 河出書房新社 2005/03/15 ¥1,470

なんだ、そうか。もうとっくに、失っていたんだな。そんな気持ちを描くのがこの人は天才的に上手い。晴れがましいとか清々しいとかだけじゃない、寂しいだけでも悲しいだけでもない、開放感と喪失感をいっぺんに感じさせてくる、非常に珍しい人である。

表題作「泣かない女はいない」の主人公睦美も、「センスなし」の主人公保子も、自らを「鈍い」と評している。他人を把握するのにも時間がかかるが、それ以上に自分の気持ちに対して鈍い。怒りも悲しみも恋心も、一拍遅れてやってくる(ここで彼女らに共感できる私も多分かなり相当鈍い)。彼女たちはある日突然、はっと気付く(それはそれは唐突に)。そうか、そうだったのか。「もうとっくに、失っていたのか」と。それは思いもよらぬ救いと同時に、それまで麻痺していた痛みも引き起こす。どちらも確かに感じながら、次の瞬間、急速にどちらかの方向へ向けて傾いていく。今までもずっと、少しずつ傾いていたことに気付かされながら。
こんな作品を描き続けられる長嶋さんて、ホントに鋭い人だと思うのだ。

追記

この本は必ず表紙をめくってみてくださいね。
ISBN:4594036767 単行本 扶桑社 2002/10 ¥1,500

ギャーカワイイイー。

トミーを見るたび、私もまだまだガーリー路線で大丈夫だと根拠もなく勇気づけられるロクハナ28才。
ISBN:4004304989 新書 小林 恭二 岩波書店 1997/04 ¥693

これは面白い。目からウロコ。素晴らしい愉悦感。短歌ってこんなに面白かったのか。
新書で面白いの当てるとなんか得した気分になりますね。これは短歌と短歌が一対一で優劣を競い合う、伝統の競技「歌合(うたあわせ)」を現代によみがえらせたもの。大ベテランから気鋭の若手まで、二十人の歌人が2チームに分かれての短歌合戦。歌そのものもさることながら、自分のチーム側の歌を誉めそやし、相手側の歌を蹴落とす、その評価合戦もかなりの見もの。著者の小林恭二氏の解説、評価、胸の内などを読んでるうちに、いつの間にか自分もその場に参加しているかのように熱くなって考えている。はて、どちらの歌を「勝ち」にすべきか??

この本の中でも絶賛されている、大滝和子の詠んだ歌

家々に釘の芽しずみ神御衣(かみむそ)のごとくひろがる桜花かな

は私も最高傑作だと思います。彼女の代表歌「サンダルの青踏みしめて立つわたし銀河を産んだように涼しい」以上の傑作かもしれない。少なくとも私はそう思いますけどね。これを読むためだけでもこの本は十分価値ありますよ。他に俵万智、東直子、穂村弘なども参加しています。ほむほむファンの方も是非どうぞ。
レベルの高い作品で合戦するのって、見てるだけでもとっても興奮します。
ISBN:4576040308 単行本 Banana Boat Crew 二見書房 2004/03 ¥1,050
オードリー・ヘプバーン、カトリーヌ・ドヌーヴから、ジェニファー・ロペス、グイネス・パルトロウまで。古今の女優たちの言葉を写真とともに紹介。おしゃれのヒントになる一冊。

うああああ、ジェーン・バーキンが可愛いいいい。今でも大変おきれいですが、若いときのフレッシュさはまた堪らんものがありますね。マリリン・モンローのシャツにジーンズというファッション、私大好きなんだよ。知的で女っぽいって憧れる、アヌーク・エーメ。女優時代から既に王妃みたい、グレース・ケリー。なんて身体だブリジット・バルドー。修行僧が見たら道踏み外すぞ(まだ少林寺引きずってるのか)。
しかしこの写真集でいちばん印象に残るのはオードリー・ヘプバーンだ。彼女は笑顔もいいけど憂い顔もいいんだよね。特にパリで撮った写真が素敵。何故か分からないけど助けてあげたくなる感じ。ちっとも哀れではないのに。不思議だ。「ローマの休日」で有名になる3年前の写真など、最近になってみつかった秘蔵写真も見どころ。
これだけ多くの女優を載せながら、ひとつの写真集として非常に品良くまとまっている。「女性から見て美しい写真」を厳選して集めた努力の結果だろう。写真が全部セピアで統一してある効果も大きいと思う。質の良さとノスタルジーをいっぺんに感じられるからね。そして女優一人一人のエピソードがなかなか読ませる。面白い。こんなにも自分とかけ離れた美しさを持つ人たちなのに、不思議と共感を抱くのだよ。女子同士の共犯者的な親しみと言いますか。

気軽にめくれる小さいサイズも好感触ですよ。値段も手ごろなのがまた、気さくな感じで良いね。
ISBN:4902055007 単行本 さやか 薫風社 2005/04/20 ¥1,365

私が「松葉崩し」を「文金高島田」みたいな日本髪の名前だと思い込んでた、というのは内輪では有名な話。さぞかし優美な髪型だろうと思ってたらあれですもんね。なんかこう、垂直に交差するやつですよね。難しそうなのでやったことありませんが。……ホントにちゃんと入るのかこれ。

この本は「四十八手」をテーマに、女の子どうしで(時にはぬいぐるみ相手に)かーわいい絡みを見せてくれるイラスト集。文は三浦有為子が書いてますが、それはほとんどどうでも良いというか。三浦さん自身もなんだかちょっとコンセプトを勘違いしていたらしく、文章があんまり絵と合ってないんですよ。残念。
肝腎の絵の方はおしゃれで可愛くて繊細で、エロスを扱ってるんだけど汚しちゃいけないような清潔感もあって、素敵です。馬乗りになって相手の首に手綱を掛けてる女の子の、ほがらかで無垢な笑顔が愛らしい。炬燵で重なりながら蜜柑食べてる絵もあったかそうで良いなあ。見てると女の子の柔肌が恋しくなります。寒い日はこんな風に女どうしで乳繰り合ってたら、もしかして最高に幸福なんじゃないかとか、ストレートの私ですら思い込んでしまう。そこまでいかなくても、幸せそうに絡み合う女の子たちを見ながら「あ、ちょっといいなあ」と思う女子は決して少なくないだろう。うーんなかなかの影響力。
女の子同士なので分かりにくいかと、女子側の子には髪飾りを付けるという親切っぷり。そんな細かいとこも好きですよ。言われないと気付かないとこですけど。
イラストを描いたさやかさんは、当時20才の美術学校生だったということで、絵がまだ固まってない感じも良いんですよ。これからどんどん面白い絵を描いてほしいですね。
ISBN:4488802036 文庫 フランチェスカ・リア・ブロック 東京創元社 2002/07 ¥504

ごめんなさい、激しく勘違いしてました。きっと自意識過剰な女の子が主人公で、内容はエグくて荒んでて薄っぺらで、文体はナイーブ過ぎて好きになれないだろうな、って。

大間違いでした。すまん。土下座して謝る。

面白いよウィーツィ・バット!!自意識過剰で勘違いなのは私の方だったよ。
「きらきら光る文字で詩が書いてある五〇年代のタフタや、ピンクの子ブタやディズニーのキャラクターのついた、子供用のシーツで作ったワンピースを着てい」る高校生の主人公ウィーツィ。ランプの精に願い事を叶えてもらって、とっても素敵なお家に大好きな人たちと住むことに。
幻想的で「ありえない」物語なのに、登場人物たちが感じる痛みや悲しみは現実的。その両方がお互いを引きたてるから、物語はぐっと深みを増して美しく切ないものに。
「それからずっと幸せに」という意味は分からなくても、「幸せに」という意味なら分かる、実行できるウィーツィ。彼女の賢い分別と、愛情に満ち満ちた日々が続く限り、この物語は途方もなく「ずっと幸福に」続いてゆくに違いない。
ISBN:402257822X 単行本 夏石 鈴子 朝日新聞社 2003/04 ¥1,365

なぜあの人やあの人が落ちて自分が受かったのか、いくら考えてみても選考基準や決め手はさっぱり分からぬまま就職試験をパスしていたみのり。短大卒。20才。出版社に入社。配属先は「受付」。
自分の覚束なさとヘンテコな社会。なんだかさっぱり理解できない人や、まったくわけの分からない仕組み。今まで自分が培ってきた常識と、外の世界の、なんと大きく噛み合わないことか。そこに生じる違和感に戸惑いながらも、どうにか折り合いをつけてゆこうとするみのり。その姿は頼りないが、清々しく健気である。

私は夏石鈴子の言葉使いが凄く好きだ。言ってることがすっと入ってきてストンと腑に落ちる感じ。「そーそー!そーなの!!」みたいな大袈裟な共感では決してない。「あ、そうか。そうだ。そんな風に思ってた」そういう静かで確かな納得。それがあんまり自然に語られるので、知らないうちに心を揺さぶられていて、気がつくと「あれ、なんでこんなに切ない気持ちになってるんだろう」と驚いてしまうくらい。
ヘンテコ社会に翻弄されつつも、その中で自分の正義を実行できるみのり(電話線を抜いて絶対電話を受けようとしない人がいるので、電話線が絶対抜けないようにセメダインで固める・笑)。「みのり、頭いいね」と感心されて、「え、自分では意地悪だと思ってた」。こんな噛み合わなさも良いなと思う。これから先はまったく何があるか見えないが、最後は不思議と晴れ晴れした気持ちになります。
ISBN:4560027358 単行本 リディア・デイヴィス 白水社 2005/10 ¥1,995

すごい本を見つけてしまった。こんな本を「偶然手にした」翻訳者の岸本佐知子も凄いが、それをまた「偶然手に取った」私も凄い。天才的な勘の良さ。見事な嗅覚。喩えるならトリュフを嗅ぎつけるメス豚。喩えるんじゃなかった。

言うまでもないがいちばん凄いのは作者のリディア・デイヴィスです。本邦初翻訳。1ページにも満たずに終わる短篇から、私小説、旅行記など、実に様々な体裁の文章が並ぶ。ブローティガンのブツ切り小説に慣れてる私でもあっけに取られるような並び。そしてひとつひとつのなんと、予想外で面白く、ふいをつかれることか!
例えば「地方に住む妻1」という短篇。息子と話したくて電話をかける妻1とそれに対して不機嫌に応じる妻2。息子は妻2の声が不機嫌だったので、父親の妹からの電話だと思ったと妻1に言う。いつも怒っている電話魔の厄介な叔母だ。妻1は以前は自分がその叔母から夫を守る立場にあったことを思い出し、今は自分が妻2にとって「厄介な叔母」と大して変わらぬ立場にあるのではと考える。ここまでは普通。書き方がちょっと独特だけどまあ理解できる。この作者のあんまり普通じゃないところは、そこから更に「未来の妻3」にまで想像が及ぶところ。未来の妻3は妻2の想像の中で、「厄介な叔母」に加え妻1、妻2からも夫を守っている。
あまりにも日常的で平和で平凡で、ありきたり過ぎて気付かなかったことに対し、作者はいとも簡単に目を向け、指摘する。あっさりと。そのことによって物語は予想もつかない方向に展開し、理屈は覆されて新たな理屈を生み出し、新たな理屈は理屈として語られてるうちにまたいつのまにか覆されて古い理屈に戻り、更に覆されるということについての理屈についても言及され、すべての理屈が通りつつも何がなんだかさっぱり分からなくなってゆくのである(笑)。この催眠術のような独特の語りは、読者の心を落ち着かなくさせつつも病み付きにする。特に私のような理屈っぽい女にとっては堪らない。もうすっかり虜である。

一篇、読んだ覚えのある話が入っていて「あれ?」と思ったら、ポール・オースターの「トゥルー・ストーリーズ」の中の一篇と同じ内容だったんですね。リディアは当時オースターと付き合っていたので、その時のある経験をお互いにそれぞれ短篇にしたらしい。リディア・デイヴィスの小説に登場人物の名前はほとんど出てこず、一人称は「彼女」や「私」や「私たち」という何ともおぼろげなものばかりである。それも総て誰とでも入れ替え可能なような、曖昧なものだ。だからオースターとの私小説という短篇も、生々しさのようなものとは一切無縁。そういうのが苦手な方は安心して大丈夫ですよ。

最後に、短篇「二度目のチャンス」から。十八歳で結婚して後悔しても、二度目の結婚をまた同じ十八歳ですることは出来ないし、相手だって同じというわけにはいかないのだから、同じ失敗を二度するなと言われても無理だ、という理屈。私はかなり笑いました。
ISBN:4309203582 単行本 メグ・キャボット 河出書房新社 2002/02 ¥1,680

ごく普通の女子高生ミアが、突然プリンセスの立場に祭り上げられちゃって「オーマイゴッド!」とか言いながらプリンセスレッスンやら恋やら友情やら家庭内のゴタゴタやら代数の勉強やら陰謀やらを相手に「しょうがないからやるけども。でも無理だと思うんだ実際。これでも頑張ってるんだけど!」という姿勢で奮闘するお話。どこまで行ってもこの普通っぷりが崩れないのがミアの魅力。かっこいい男の子の外見にくらっと来てても、自分では彼の「内面の美」を愛してると思い込んでるとことか、可愛いよなあ。よくある間違いだけど(笑)。親友リリーとその兄マイケルも良い味出してる。彼らの口喧嘩を聞きながら、自分の知らない単語がポンポン出てくるので「うわあ、二人とも、アッタマいい!」と感心しているミアもまた面白い。
プリンセスになろうがなんだろうが、自分のできることには限度がある。そういうミアの常識感というか「身の程」を知ってるところが、この物語を嫌味のないものにしていて、カラッと楽しませてくれるんじゃないかな。プリンセスに向かって「身の程」ってのもなんか変だけどね。

透明人間の失踪

2005年12月4日 読書
ISBN:4091670024 コミック 吉野 朔実 小学館 2003/08/23 ¥530

この表紙は大好きだ。私は嫌いな絵があまりない分、ずば抜けて好きな絵も少ない。しかし吉野朔実の絵は例外的にめちゃめちゃ好きである。彼女の描く少女たちの真似をして、今まで何度も前髪を短く切ってきた。そしてそのたびに「あーあ」って思ってきた。横から見ると特に悲惨だ。いやそんな話は今いいか。

吉野朔実を初めて読むなら、この短篇集はかなりお勧め。わりと新しい作品集だし、狂気も憎悪も美しさも救いもバカバカしさも、すべて堪能できるから。表題作の「透明人間の失踪」は、恋人が語っていた名前も会社名も身分も生い立ちも全部嘘っぱちだったと気付いたヒロインが、彼を探しに奔走する話。その過程もコマ割り(?)が効いてて面白いんだけど、彼が見つかってからがまたゾッとする場面の連続で目が離せない。このヒロインの髪型にも憧れたっけなあ…て、結局そこに落ち着くのか。行動を起こし、すべて片付けた後に、屋上で弁当食べてる彼女の画が私は好きだよ。
ISBN:4091996922 大型本 吉田 秋生 小学館 2003/05/26 ¥2,730

なんだよ!クロサキ中尉出てないじゃん!!結構高かったのに!!
しょうがないな、これ資料にして自分で勝手に描いちゃうぞ。

アイコラみたいな感じで。
ISBN:4063375862 コミック サラ イネス 講談社 2005/11/22 ¥560

「絵が…構図が…ダメ…読めない」と、学生からはことごとく不評なサラ イネス。それでも内容をかいつまんで話してやるとめちゃめちゃウケが良い。そか、絵があかんのか。私は全然気にならないのだが…。

内容を喋ってウケるのは良いんだけど、マンガそのものを見てくれないと分からない面白さもあってもどかしい。4巻で言うと天然記念物のニホンカモシカを食べる話とかね(※食べてはいけません)。これをマンガと同じ間で伝えるの難しいわ。同じような話で「大阪豆ゴハン」のリスを食べる話も、個人的にゲラゲラ笑いながら読んだ大変面白い話なんですが、口で伝えると多分面白さが半減しちゃうんだよなー。リスと目が合ったときの愛らしい雰囲気と、そこから一瞬で「食った」と繋がる予想外な展開、さらに「不味かった」という力の抜けるようなオチをどうやって伝えたら良いものか。無理だよな。うーん勿体無いなあ。て、なんで噺家でもない私がこんなに苦労しなきゃならんのだ。まああれだ、1巻くらい読めば絵にも構図にも慣れるから頑張って読め。「攻殻機動隊」とか平気で読めるくせに「誰も寝てはならぬ」が読めないわけないだろう>学生。
ISBN:4120032000 単行本 イアン・マキューアン 中央公論新社 2001/11 ¥1,890

子供は面白いが大人はちっとも面白くない、という本を子供に読み聞かせることにうんざりしている大人たちへ朗報。もうあれだ。無理に子供に合わせなくて良い。本当はちっとも面白くない本を抱え、イノセントだとかノスタルジーだとかで自分を騙し、「子供の本は素晴らしい」などと無理矢理思い込まなくても良い。

大人も子供も楽しめる本がここにある。
ありがとうイアン・マキューアン。

ピーターは空想好きな男の子。人形に襲われ、ネコになって喧嘩に勝ち、赤ん坊と入れ替わり、いじめっ子の謎を解き明かす。どの短篇も面白いが、赤ちゃんになったときの積み木に夢中になる描写がとりわけ笑える。赤ちゃんにされたことに対して周りの大人たちに抗議しなくては、と思うのだが、ふと傍らを見ると何とも言えない魅力的な黄色をした

三角の積み木が!!

こんな素晴らしいモノがこの世にあったとは!!この形!この色!手で持って遊ぶだけなんて勿体無い、体中、口の中まで使って全身でこの積み木を感じなくては!!って抗議するのも忘れて無我夢中で遊ぶんですよ。遊んでる場合じゃないのに(笑)。いやはや笑える。大人になったらなったで今度は、常々下らない、意味がないと思っていた「散歩」をなんと自分から提案するピーター。「散歩に行かないか?」散歩!!散歩だって?!自分で言っててびっくりするピーター(笑)。うんうん大人にとっては散歩ってそんなに不自然な行為じゃないからね。ましてやきれいな女の子と一緒のときなんか。すすんで散歩に行きたがる君の気持ち、お姉さんよく分かるよ。
いじめっ子の章では、なぜみんなが彼を恐がるのか、ふとしたことからそのからくりを見抜き、謎を解き明かしてしまうピーター。その手腕はかなり見もの。第2章の「ネコ」あたりからぐんぐん面白くなってくるので、試し読みの方はぜひそこまで。これは子供に聞かせてやっても相当ウケると思うぞ。
ISBN:476611423X 単行本 奥川 純一 グラフィック社 2003/08 ¥1,365

「ブラウンダイアリー・ボンボヤージュ」の表紙が劇的に可愛いんだが、そちらは出ないようなので「ゴールデン」で。ちっちゃなくま、ブラウン(茶色だからブラウン、安易)の小さな日常。走って、転んで、隠れて、逃走。寝起きは悪いし寝つきも悪いし。コーヒーこぼすわ障子つきやぶるわ。まったく可愛いったらありゃしない。私が同じことしたら確実にぶん殴られるだろう。しょうがないな、くまだからな。

↓ウサキチも同じくらいメジャーになると良いね。
http://page.freett.com/usakichi/

おわりの雪

2005年12月2日 読書
ISBN:4560047987 単行本 ユベール・マンガレリ 白水社 2004/12/10 ¥1,680

トビを飼いたいと強く願う少年と、死の床に伏せっている父親。少年はトビを獲る男の物語を父親に語って聞かせる。「『男の影はひとつの黒い夜でした』ふと口をついて出たことばで、大した意味はない。というより、ほとんどまったくない。でも、そのフレーズが出たときには、自分でも素敵だと思った」

トビを飼いたい。あのトビのために、少年が犠牲にしなくてはならない犬や猫たち。お湯を張った桶のなか、麻袋の中で動かなくなった子猫。老犬を捨てに行く長い道程。帰り道で犬に遭うのが恐ろしく、走って走って、途中で見つけた犬の足跡。自分を追うのを諦めて、森の方へ歩いていった犬の足跡。「あっちにはなにがあったんだろう?」
死んでゆく者たちの静けさと、生きてそこにあるものの輝かしさ。雪がたくさんふった年、少年はその狭間を行き来しながら喪われるものを感じ続けている。こんなにも――的確に描けるものだろうか?彼の一冬を。犬を捨てにゆく彼の道程が、ぎゅっと握られた固い雪のように、いつまでも胸の中に残っている。

薔薇と野獣

2005年12月2日 読書
ISBN:448801318X 単行本 フランチェスカ・リア・ブロック 東京創元社 2003/10 ¥1,470

暖かな渓谷に育つ唯一の雪、スノウ。指貫(シンブル)がコップ代わりの小さな少女、タイニーは庭の柵を越え、少年のもとへ。眠り姫は自分自身にヘロインの針を刺して長い眠りに。義父に襲われたらお婆ちゃんの銃で立ち向かわなきゃ、赤ずきん。氷の女王が自らの髪に触れると、ダイヤモンドが弾け飛ぶ。果実、水晶、香水、石鹸、シャンパーニュ・ロゼ、レース、薔薇、キルト、蝋燭、ヴェルヴェットのクッション、ライムの輪切りを浮かべた水、白鳥の羽飾り、樹皮や葉や花の匂いのするオイル、更紗木蓮や極楽鳥花やハイビスカスでいっぱいの中庭。

堪らんよね。

フランチェスカ・リア・ブロックの並べる言葉を追うだけで、美しく透明な空気をたくさん吸い込んだような心地よい錯覚に襲われる。こころなしか身体も瑞々しく生まれ変わったような?体内浄化作用?血液サラサラ効果?マイナス・イオン出てる?酸素バーってこんな感じ?(全然違う)
ただでさえフェアリー・テイルや神話の幻想的なイメージを独自のスタイルで紡ぎ出すのが得意な作家。「白雪姫」を始めとするこれらの童話たちが、魅力的に語られないわけがない。冴え冴えとした清涼感はやみつきになりますね。彼女のスタイルに溺れながら、時々鋭い針でズキンと刺されるが良いよ。国中の糸車を隠しても、眠り姫はやはり王子のために針を見つけてしまうのだ。

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